令和3年11月19日に開催した「江刺金札米学会」シンポジウムは、多くの方々に参加いただき、お陰様をもちまして無事終了いたしました。
本シンポジウムは、多様な分野の専門家の講演をお聞きし、「江刺金札米」誕生の背景と先人の活躍を振り返りながら、今後の米づくりを展望するものとなりました。
シンポジウム開催に際し、講師の皆様をはじめ、ご協力いただいた関係各位に対しまして、改めて感謝申し上げます。
このたび、シンポジウムの各講演の動画アップロードが完了し、オンデマンドでご視聴いただけるようになりました。 当日参加された皆様はもちろんのこと、参加できなかった皆様にも無料でご覧いただけます。どうぞ、お楽しみください。
配信内容の撮影、録画、録音、スクリーンショット、これらに類似する行為は固くお断りをいたします。また、映像、画像の転用や外部への転載も禁止しております。ご理解の上、ご利用ください。
「江刺金札米」は、大正後期から昭和初期にかけて、「陸羽132号」の導入を契機とし、関係者一丸となった取組により、全国最高位の格付け評価を獲得して、一大センセーションを巻き起こし、国内にその名を轟かせました。
令和3年(2021年)、「江刺金札米」が生誕100周年を迎えることから、これを記念して、幅広い分野の専門家をお招きし、ブランド米誕生の背景、当時の関係者の熱い思いや功績などをお聴きしながら、その成功要因を検証し、そこから何を学び、どう生かしていくかを話し合い、今後の地域づくりや農畜産物のブランド化などの取組に生かしていきます。
江刺金札米100周年記念行事実行委員会
実行委員長 小川 節男 氏
岩手県 県南広域振興局長 佐々木 隆 氏
奥州市長 小沢 昌記 氏
岩手江刺農業協同組合稲作部会長
高橋 貞信 氏
現在のコメ市場を概観し、数多くのブランド米の中で、最古の歴史を持つ「江刺金札米」を評価しながら、その原点を考える。
1962年京都府生まれ。博士(農学)。1989年京都大学大学院経済学研究科博士前期課程修了、2007年東北大学大学院農学研究科准教授、2017年同大学教授。2020年日本農業市場学会副会長。専門は農業経済学・農業市場学。主な著書には「グローバリゼーション下のコメ・ビジネス─流通の再編方向を探る─」(2003年)など。農林水産省の委員等を歴任。
「米騒動」が全国に伝播した大正時代、米価の極端な乱高下が続いていた。「南部のアヒル米」と酷評され、最下位の格付けにあった岩手米の「改良」が江刺郡から始まる。
岐阜県高山市生まれ。博士(農学)。1985年北海道大学院農学研究科博士課程修了、1998年岩手大学大学院農学研究科教授、2005年同大学理事・副学長、2011年徳島大学総合科学部教授、2016年徳島大学生物資源産業学部教授、2019年帝京大学経済学部教授(現任)。2017年日本農業経済学会副会長。主な著書に「近現代日本の米穀市場と食糧政策(2013年)、「日本小農問題研究」(2018)など。
1982年奥州市生まれ。2005年岩手大学教育学部卒、同年胆江地域農業共済組合(現・岩手県農業共済組合胆江地域センター)入組、現在に至る。本業の傍ら戦史及び近現代史を中心に研究。2007年度岩手競馬年度代表馬等選考委員会「馬事文化賞」受賞。著書に「奇蹟の軍馬 勝山号 日中戦争から生還を果たした波瀾の生涯 」(2020年)。
革新的な品種「陸羽132号」の普及、最新技術の導入と徹底した栽培管理が当時の稲作を一変させる。そして、同じ時代を生きた宮澤賢治はその様子を農家にどう伝えたのか。
1990年東北大学農学部卒。同年北陸農業試験場、2001年農研機構作物研究所、2005年学位取得(農学博士)、2010年東北農業研究センター(現任)。水稲の品種開発を手がけ、「ちほみのり」「あきだわら」等の業務用品種をはじめ、糯、米粉用及び飼料用品種を多数育成。2010年日本育種学会賞、2008年畜産大賞(研究開発部門優秀賞)など受賞。
1992年岩手大学農学部卒、同年岩手県庁入庁、岩手県病害虫防除所、各農業改良普及センター、岩手県農業研究センターを経て、2020年から現職。一貫して稲作及び水田利用等に関する指導・研究に従事。
1963年秋田県生まれ。博士(医学)。1986年岩手大学農学部卒、1988年同大学大学院修了、1991年山形大学大学院博士課程中退。2000年岩手大学助教授、2006年同大学教授、2021年同大学農学部長(現任)。1999年ゴードン会議Early Career Scientist賞、2004年日本生化学会東北支部奨励賞、2012年平成24年度「科研費」審査委員表彰。
消費地への俵米共同出荷の戦略性、さらに、赤札を金札に付け替え、大黒像を米俵に封入してブランドを証明する画期的なプロモーション手法を明らかにしていく。
1930年水沢市(現奥州市)生まれ。1953年岩手大学農学部卒。1953年岩手県入庁。1983年岩手県立農業試験場県南分場長、1985年岩手県農政部農産普及課首席専門技術員、1987年水沢農業改良普及所長。1992年水沢市農業協同組合代表理事組合長。現在、岩手県インドネシア友好協会長。
1990年岩手大学大学院農学研究科修了、同年岩手県庁入庁、岩手県立農業試験場、岩手県農業研究センター、農業改良普及センター、地方・広域振興局を経て、2020年から現職。これまで水稲育種、水田利用、畑作園芸、担い手指導等に関する業務に従事。
1976年盛岡市生まれ。1999年盛岡大学文学部卒。1999年江刺市教育委員会文化財調査員(嘱託)、2003年えさし郷土文化館(現任)。専門は考古学・地域史。主な業績に、「両面厨子入二明王と中世の信仰思想」(企画展図録『雅静の美−正法寺の至宝を巡る−』えさし郷土文化館2021年)、企画展図録『祈りの玩具−郷土玩具と信仰−』(同左2019年)ほか。
江刺米の販売を委ねられた「木村徳兵衛商店」は、販路開拓に奔走し、その評判やコメ市場の様子を郡農会に頻繁に伝えていた。農家はこれに応え、産米改良に一層努めたのだ。
1948年生まれ。1970年慶應義塾大学経済学部卒。1971年木徳株式会社(現・木徳神糧株式会社)入社、1990年常務取締役、1992年代表取締役社長、2007年取締役会長(現任)。全国米穀販売事業共済協同組合理事長、一般社団法人日本精米工業会会長理事、一般社団法人全日本コメ・コメ関連食品輸出促進協議会代表理事など多数歴任。2018年旭日中綬章受章。
シンポジウムの締め括りとして、次代を担う生産者、農協と行政の若い担当者が、これからの米づくり、そして、「江刺金札米」の未来を大いに語る。
2013年就農。水稲「江刺金札米」7ha、水稲作業受委託7ha、繁殖牛2頭。岩手江刺農業協同組合稲作部会玉里支部副部長を務める。
2008年岩手江刺農業協同組合入組、農産課(現・米穀課)で「江刺金札米」の生産振興に携わる。
2016年岩手県庁入庁。前任地の奥州農業改良普及センターで「江刺金札米」を栽培技術指導を担当。
基調講演の欄に記載
「岩手米」は東京市場で最下位の評価で、「サワテ(濡米)」「南部のアヒル米」と酷評。
国立農事試験場陸羽支場が開発した「陸羽132号」の種籾が岩手県立農事試験場胆江分場に配布。
胆江分場が同品種の普及奨励に注力、県水稲原種に編入。
江刺郡農会は俵米の共同販売を決議。これが胆江郡内の米商連の不買運動に発展。
郡農会は東京への直移出(出荷)を企画。東京・深川市場に試食用見本米を送り、最高位の評価を獲得。
岩手県穀物検査所岩谷堂出張所の仲介で、東京市場での唯一の販売委託先に木村徳兵衛商店を決定。
東京市場への移出を開始。米俵に「味の良い岩手江刺米」と郡農会のマークを表示した「赤札」を取り付ける。
昭和天皇の御臨幸に際し、「陸羽132号」の白米を献上。
江刺米の名声が高まるにつれ、「赤札米」の模造品が横行。
穀物検査所の許可を得て、「金札」を取り付け、米俵一車中のうち一俵に大黒様の鋳像を包入。
「江刺金札米」は、昭和5年〜6年の政府買上げで全国最高の格付けとなり、業界に一大センセーションを巻き起こす。
※「岩手米今と昔」(昭和39年発行/桜井善三郎著)から引用
江刺金札米100周年を記念したテレビCMや動画をご紹介します。